ZACブログ
カウンセリングやメンタルヘルスに関するお役立ち情報などを書いていきます。
在日コリアンとカウンセリング 【part1】
ZACは2020年に日本で初となる在日コリアンのための専門的なカウンセリング機関として発足しました。臨床心理士や精神保健福祉士を初めとした心理職者、そして有志の方々のご協力のもと、小さいながらもこれまで活動を続けています。
なぜ在日コリアンとカウンセリングなのでしょうか?ひとくちに在日コリアンといっても様々な方がいらっしゃいます。そしてなぜカウンセリング・・・?
これから、在日コリアンとカウンセリングとの関係について何回かに分けてブログで書いていきたいと思います。
・そもそも「在日コリアン」とは?
日本の植民地支配の影響を受け朝鮮半島から日本に渡航した、オールドカマーの在日コリアンの方々も世代交代が進み、その存在は多様化し続けています。また日本にはオールドカマーではない在日コリアンの方々も多く在住しています。
開業以来、ZACには様々な方がいらっしゃいます。両親ともに朝鮮半島にルーツを持ち、ご自身のことを在日コリアン、在日朝鮮人、在日韓国人、在日韓国・朝鮮人だと強く感じている方から、両親の片方は日本人を初めとした朝鮮半島以外のルーツを持っていたり、そもそも祖父母にルーツがあると聞いているがはっきりしたことは分からない、という方もいらっしゃいます。自分のことを在日コリアンと呼んでもいいのかよく分からない。でも周りの「日本人」が抱かないような感情や悩みを持つことがある…揺れる思いを持つ方、そもそも「在日と呼ばれたくない」と思う方もいらっしゃいます。
・「自分について安全な空間で自由に考えられる」ことを目指して
ZACは朝鮮半島にルーツを持つ方を対象としたカウンセリング機関ですが、その方がご自身のアイデンティティについてどんなふうに思っているか、ご自分のことをどう呼ばれたいか、そして今後どのように生きていきたいかといったことに関しては、(当然のことですが)お一人お一人、その方のご希望や思いを最も大切にし、そこに丁寧に伴走することを目指しています。つまり、在日コリアンとして生きていきたい、日本人として生活していきたい、アイデンティティを模索したい、海外に移住したい…どのような思いを持つ方に対しても、そのひとつひとつを尊重し、その方が望んでいることを応援する、一人ひとりの人生に立脚することを大切にしています。
当たり前のことですが、「あるべき姿」を押し付けない、ということにとても注意しています。そのためには、「在日コリアンとしてこのようにあることが望ましい」といった理想や「べき」を押し付けないことがまずはとても大切です。またそれだけでなく、日本社会には日本人として生きることが最も無難で安全であるという強い同化圧力もあります。その圧力に対する疑問や、時に抗いたいという思いも、丁寧に尊重し、共に考えていく必要があります。
ZACでは、朝鮮半島にルーツを持つ方々が、アイデンティティを初めとして、自分のこと、家族のこと、将来のこと、時には精神的な症状や対人関係の悩み、そういったことを安全な空間で自由に考えられるような場を提供できることを目指しています。逆に言えば、このような問題を「自由に」「安全に」考えることが非常に難しい、という現実があります。
・時には、利己的になってもいい
これまで、在日コリアンは歴史的にも社会的にも様々な苦境を味わってきました。日常にある偏見や蔑視だけでなく、就職や結婚といったライフステージにおいて重要な場面で影響を及ぼす差別、朝鮮半島のその時々の情勢や日本政府との関係に翻弄され、影響を受けます。また家族が何世代にもわたって暴力やトラウマの世代間伝達に苦しむこともあります。もちろん、苦しむだけでなく在日コリアンはコミュニティを形成し、様々な権利を勝ち取り、固有の文化も育んできました。
しかし時には苦労をした家族のため、民族のため、日本社会を少しでもよくするために、自分自身の望みはおきざりにしなければいけないような状況もあったかもしれません。責任感や正義感があるほど、在日コリアンのために、社会正義のために、本来であれば社会が負うべき責任を背負わされてしまうという理不尽な現実があります。その過程で、自分は何を望んでいるのかが分からなくなったり、心身の不調に気付きにくくなってしまったりすることもあるかもしれません。またコミュニティの中で壁にぶつかることもあるかもしれません。
また、「在日コリアンでもある」自分の状況について、日本社会で言語化しようとしてもその背景を共有するだけで一苦労、という現状もあります。例えば、ZACを設立した背景のひとつに、在日コリアンの方々がカウンセリングを利用することが難しかった、という声があります。これまで、「家族のことや民族名を名乗るかどうかなど自分の悩みとルーツは絡み合っている。『在日コリアン』について何も知らないカウンセラーに話すのはとても苦労した。」「『自分がなぜ日本にいるのか』ということから説明をしないといけず自分のカウンセリングどころではなくなってしまった」といった声を聞いてきました。また在日コリアンコミュニティの中で抱えた葛藤については、「同じコミュニティにいる人には話せば反発をうけるのではないか、かといって援助者をはじめとした日本人に話せば偏見を助長してしまうのではないか」と考え話せなかったという声も聞いてきました。
在日コリアンのアイデンティティが多様であるように、在日コリアン個々人が抱える悩みも一筋縄ではいかない、一枚岩ではない問題がたくさんあります。さまざまな思いを言語化し、自分だけのための時間を持つことで、時には自分の思いにもっと正直になってもいい、必要なら自分のために生きてもいい、そんな「自分を助ける」(伊藤,2020)方法のひとつとしてもカウンセリングをご利用いただけたら幸いです。
次回も、在日コリアンとカウンセリングの関係について書いていけたらと思います。
※伊藤絵美著 『セルフケアの道具箱』
イラストはhttps://instagram.com/hyangbokshim?igshid=YmMyMTA2M2Y=
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カウンセリングとは?
カウンセリングとは?
「カウンセリングって、友人や家族に相談するのと何が違うの?」
「話を聞いてもらうことに、お金を払わないといけないの?」
「話すだけで解決するの?」
カウンセリングに対して、しばしばこのような疑問が投げかけられることがあります。
今回のブログでは、カウンセリングとは何か、どんなことができるのかについて少しお伝えできたらと思います。カウンセリングにも様々なものがありますので、あくまでZACでのカウンセリングとして読んでいただけると幸いです。
・(ZACの)カウンセリングとは
カウンセリングでは、来談してくださった方の抱えておられる“困りごと”や“悩みごと”に焦点を当て、多くの場合は回数を重ねながら集中的にお話をお聴きしていきます。
その過程では、ただ漫然とお聴きするのではなく、まず困りごとや悩みごとがどのような経緯や状況の中で起こっているのかを整理していく「アセスメント」を行います。アセスメントの過程では、カウンセラーからも質問をさせていただき、一緒に問題を整理していきます。その上で、カウンセリングの目的を決め、一緒に取り組んでいきます。困りごとに対しては、誰しも自分なりにこれまで色々な取り組みをされてきたことと思います。それを最大限活かし、リスペクトしつつ、「一人ではどうにも難しい」からこそカウンセリングをご希望されているかと思いますので、カウンセラーも一緒にできることを探っていきます。アセスメントの過程でも、問題への取り組みの過程でも、必要に応じて心理支援の専門的な知識を活用します。また時には、とにかく誰かに話したい、聴いてもらいたいという目的で来てくださる方もいます。そのような場合は、「問題に取り組む」という姿勢ではなく、その方のご希望に添えるようにお話をお聴きしていきます。
・カウンセリングの特徴:どんなことが出来るか
それでは、カウンセリングでどのようなことができるのかを少しご紹介させていただきます。
① “常識”の範囲を超えた深い話ができる
私たちの抱えている「悩み」の根っこは、思った以上に根や奥が深いことがあります。例えば幼少期の体験やその人がよって立つ社会的状況、現在の入り組んだ人間関係など、短い時間で簡単に表現することが難しく、そもそも「問題の理解」に十分な時間をかける必要があることがあります。しかし、日常の中でそのような時間をとることは難しい場合が多いでしょう。そのために、日常の中での相談は時に「常識的」なアドバイスにとどまってしまうことがあります。もちろん、それは時に「生活の知恵」であったり、聴いてもらえること自体がほっとしエンパワーされることも確かです。ちょっとしたこと、時には深い悩みを相談できる人間関係はとても大切です。
一方、例えば励ますつもりで相手が言った言葉が、当事者をさらにおいつめてしまうことがあったり、自分の話を丁寧聴いてもらえなかったりすることもあるでしょう。カウンセリングでは、まず来談してくださった方の視点に立ち、見ていること、感じていること、その方を苦しめていることを丁寧に聞いていきます。その際、常識は一旦括弧に置きます。「“普通は”こうあるべき」とか「“常識的”にはこうしなければいけないのに」ということは一度ちゃんと保留し、時にはそれ自体「本当だろうか?」と “常識”そのものも検討の対象としながら、悩み事について取り扱っていきます。
② 自分の話に時間をかけ、集中することができる
上記とも関連しますが、忙しい日常の中で自分のことを何回も心ゆくまで人に話して聞いてもらうということは実際にはとても難しいことです。相手に対して申し訳なさや遠慮が出てしまうのは、当然のことでしょう。しかし、悩みの根っこが深かったり状況が複雑な場合、簡単には話せない問題を抱えてしまうこともあります。カウンセリングでは、時間を重ねながら自分の話に集中することができます。
③専門的な見方や助言を得ることができる
カウンセラーは漫然と話を聞いている訳ではなく、クライエントの話に対して一定の仮説やモデル、時には介入の方法などを考えながらお聴きしています。ZACでは「困りごと」に対して、心理社会的視点を重視しながらお聴きしていきます。その方の生育歴、(時には)症状、また社会的状況による構造的な背景についても共有させていただいた上で、その方の「悩み」に対して具体的なアプローチを探ります。その時に、必要に応じてその方の考え方や行動のパターンに対して、認知行動療法の技法を活用することをご提案することがあります。ご自身の状態や悩みごとに対する心理社会的なアセスメントと具体的介入の方法を考えられるということも、カウンセリングの特殊性といえるかと思います。
(ZACのカウンセラーは臨床心理士や公認心理師などカウンセリングの専門資格をもっていますので安心してお話いただけます。)
ZACでは来てくださった方の意志やご希望を尊重することを大切にしています。その上でマッチすれば、悩みや問題に対して一緒に取り組むチームとなれればと思っています。一回のご利用のみでもウェルカムです。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
“感情のコントロール”が難しいワケ
2023年3月14日
身近な関係を大切にするために Part 5
前回は、身近な関係の中で自分の意志や主体を認めてもらえないこと、つまり侵入に関して、侵入を受けている人がそこから抜け出す難しさについて取り上げました。
しかし、特定の他者に対してつい侵入的になってしまう、自分でもやめなければと思うのに、身近な相手に感情をぶつけ、主体を侵害しようとしてしまう。そういう侵入側の抱える困難もあります。
もちろん、人に対する暴力や暴言は許されることではないでしょう。ですが実際には加害と被害は複雑に絡み合い、一人の人の中に同居している場合が多くあると考えます。
例えば、幼い頃は感情的な両親に振り回されその顔色をうかがっていたのに、自分が実際親になると子どもに対して非常に感情的に接してしまう。身近な他者にされて嫌だったことを、なぜかパートナーに対して繰り返してしまう。心を許し期待している相手に対しては感情のコントロールが効かなくなり、特にネガティブな感情を爆発させてしまうといったことは、家庭を始めとした閉じた空間では発生しがちです。
このような、怒りを始めとしたネガティブな感情の爆発に対して、「感情をコントロールしましょう」という言葉を聞くことがあります。しかし、実は感情をコントロールすることは非常に困難であることが知られています。例えば、「幸せな気持ちになってください」「心から悲しんでください」と突然言われても、意志さえあればそのような状態になれるかというと、決してそんなことはないでしょう。実際、感情はある種の「反応」であり、人為的に作り出すことが非常に難しいものです。
また、感情は様々な背景から発生してくるものです。その場に限ってみれば、「なぜそんなことで?」と理解が一見難しいような怒りや悲しみも、その人の過去やこれまでの歩みを見直すことで「なるほど、そうだったのか」と理解できることも多いのです。
このように、感情はとても個別的なものです。その人のこれまでの歩みや体験、社会的に置かれている状況、物事の捉え方や体質、時には精神的な症状等もが複雑に絡み合いながら生じるからです。
だからこそ、感情を適切に取り扱い、身近な人を大切にするためには多くの“下準備”がいると考えます。「〜しましょう」とお題目を言われても、その通りには出来ないものです。
ZACでは認知行動療法を基盤に、相談に来てくださった方が何に困っているのか、どのような場面で感情の「揺れ」が生じてしまうのか、それに対してどのようなアプローチができるかといったことについて、その方に合わせて具体的に探っていきます。
またその際に、その方の過去の体験が重要な意味を持っている場合には、これまでの歩みを丁寧に聞かせていただき、共有しながら共に理解していきます。
身近な関係であればあるほど、過去の傷つきやコントロールが難しい感情が出てきてしまい、大切にするのが難しいことがあります。ままならない感情の背景にある自分の思いや体験もしっかりと理解してあげながら、それでは具体的にどのようにしていけばいいのか、ご一緒に模索していけたらと思っています。
ZACでは月に1度無料カウンセリングも行なっています。ご興味のある方はチェックしてみてください。
侵入に抗う~距離を取ることが難しい理由
2023年1月28日(土)
前回までのブログでは、境界線の侵害、つまり侵入の問題を述べてきました。
相手の都合や気持ち、主体性を無視して一方的に自分の都合や要求を押し付ける「侵入」。これが問題だとは分かっても、そのような「侵入」に対峙することは、簡単ではありません。
今回は、侵入を受けている人がそこから抜け出す難しさについて書いてみたいと思います。
***
例えば相手に対話や説得を試みたり、「やめて」と言っても、聞いてもらえなかったり、むしろ攻撃されてしまう場合があります。
そのような場合には、距離を取る必要が出てくるのですが、それも難しいことが多いのです。
時々、ハラスメントや暴力に対して「どうしてすぐに逃げなかったの?」とか「なぜ抵抗しなかったの?」と言われることがあります。ですが実際には、様々な条件や環境を整えなければ「逃げられない」ことが多いのです。
・経済的・物理的困難
例えば夫の収入で暮らしている妻、親に養ってもらっている子ども、人事権をもつ上司のもとで働く社員など、経済面で逃げることが難しい場合があります。また住んでいる家が一緒であったり、接触を避けるのが困難な場合にも、攻撃的な相手から逃げることは容易ではありません。それだけでなく、そもそも人間関係がなかったり相談できる相手がいないなど、孤立している場合には逃げることが難しくなります。
・心理的困難:自分の気持ちが分からなくなる
ですか経済的・物理環境が整ったとしても、心理的要因から距離をとったり逃げたりすることが難しい場合があります。
その理由のひとつに、繰り返し自らの主体を侵入されてしまうと、自分の感覚や感情を信じることが難しくなってしまう、ということがあげられます。
「こんなことを嫌だと思う自分がおかしいのではないか?」
「相手はそんなにひどいことをしただろうか?」
「自分は小さなことを大きく言い過ぎているのでは?」
これらはすべて、自分の感情を信じないために、今まで自分に言い聞かせてきたことかもしれません。
嫌だと言っても相手が意に介さないのだから、嫌がっている「自分が」おかしいのではないか?そもそもそんなひどいことなど「起こっていなかった」のではないか?
ハラスメントや侵入が反復する日常を生き延びるためには、そのような状況に適応する、「生存のための適応」が必要になってきます。
侵入してくる相手に「チューニングを合わせてしまう」のです。
これが繰り返されることで、自分は何が嫌なのか、何がおかしいことなのかが分からなくなってしまったり、自信が持てなくなってしまうことがあります。
・心理的困難:罪悪感
他にも、「苦しいことがあっても子どものために離婚はすべきではない」とか「親孝行ができるようになって一人前」、「仕事なんだからイヤなことがあって当たり前」といった「常識」や「社会通念」が逃げ出すことを難しくする場合があります。
また侵入をしてくる相手からの「あなたがいなくなったら生きていけない」「自分や家族を幸せにしてね(幸せにする義務がある)」「愛しているから、あなたを思うからこその行動(強要)」といった言葉が繰り返されることにより、相手の幸せに責任を感じていたり、相手の期待を裏切ることへの強い罪悪感を感じたりすることもあります。そのような場合にも、距離を置くことは難しくなります。
以上のような心理的要因は長い時間をかけて培われた場合が多く、一朝一夕で整理がつくものではないでしょう。
身近な関係における「侵入」は人を非常に混乱させてしまうということが分かるかと思います。
自分がどうしたいのか、何に困っているのか。安全な環境や利害が伴わない場所で、時間をかけて考えていく、丁寧に話を聞いてもらう。
侵入から脱出する時には1人では難しいことが多いので、カウンセリングでなくとも共に歩んでくれる人がいることが望ましいでしょう。カウンセリングも選択肢のひとつとしてご活用いただけたらと思います。
イラスト https://www.instagram.com/hyangbokshim/
身近な人を大切にするために part4
2022年12月18日(日)
NOを言わせないもの~身近な関係における侵入とは何か~
前回のブログでは、NOと言うことの大切さ「NOを尊重されることで人は主体を形づくることができる」というテーマについて書きました。しかしNOが大事だとしてもそもそもNOと言うことの難しさがありますよね。
NOという事への不安があったり、
自分のNOが分からなくなっていたり、
NOを言っても聞いてもらえないとあきらめや無力感があったり。
こうしたNOを言えない要因を自分の内側に発見してNOを言う力をつけていく、ということも大事ですが、自分の外側にそもそもNOを言わせてもらえない「侵入」の問題があることがあります。
侵入の結果として自分のNOがわからなくなったり、不安やあきらめの状態に陥ってしまうことがあるのです。今日はこの身近な関係における「侵入」について考えてみましょう。
***
以前のブログ(part1)で「境界線」について書きました。「侵入」とはこの境界線を破る行為を指します。「侵入」は「相手の都合や気持ち、主体性(特に自己決定権)を無視して、一方的に自分の都合や要求を押し付けること」だといえます。
これが繰り返され、相手を自分の思い通りに動かそうとすることが、身近な関係性における「支配」の現れのひとつではないでしょうか。
人は一人一人自分の気持ちや意志を持っています。「嫌だ」とか「これがしたい」とか「悲しい」とか「幸せだ」とか…。
侵入が起こるときには、一方の側の要求や都合のために、他方の感情が踏み躙られることが起こります。その最も極端で、深刻なケースが、レイプではないでしょうか。
性的関係を、いつ、どこで、誰と持ちたいか。当然ですがこれは自分が決めることです。
ところが、それに対して相手の性における自己決定や気持ちを無視し、侵害するのがレイプだといえます。レイプがもたらすダメージは様々ですが、この大切な性における自己決定に対する侵入・侵害も、深刻なダメージを人に与えます。
***
でも身近な関係における侵入はもっとわかりにくい形を取ることもあります。
「愛情」「あなたのためを思って」「家族なんだから」ーー
そうした道徳や倫理、常識の衣をまとい、まるでそれに従わないことが「ひどいこと」「悪いこと」であるかのように思わせ、侵入された側に罪悪感を抱かせる形をとることもあります。
ここで重要なのは、一方が様々な圧力やストレスをかけることによって、他方が自分の大切なことを決めることを奪っている、という非対称的な現象です。
また侵入は常にわかりやすく起こるわけでもありません。
日常的に侵入していても、ある場面では「あなたが決めたらいいじゃない」「なぜ決められないの」と自己決定を促すような言動がとられることもあります。
しかし、日常的に侵入を受けている場合には、急に自己決定を促されても混乱してしまうことがあります。そして結果的に自己決定はできず、さらに支配が強まるという悪循環が形成されることもあるでしょう。
このような状態になると人は非常に混乱しますし、この侵入や支配のパターンから逃れることは簡単ではありません。
NOを言うのが大事ということがわかりながらも、NOと言うことが難しい時や難しい相手がいる場合、自分の内側に問題を探したり、NOを言えない自分を責めたりするのではなく、自分の置かれている状況や身近な人間関係のかかわりのパターンを整理することが役に立つことがあります。
NOを言えない、言わせてもらえない「侵入」などのメカニズムが働いていることに気づくことは、混乱した自分を助け、力を取り戻す一歩となると考えます。
カウンセリングでは、そんなお手伝いもできたらと思っています。
興味のある方、気になった方はお気軽にお問合せください。
イラスト https://www.instagram.com/hyangbokshim/
身近な人を大切にするために part3
2022.11.20
「主体はNOからはじまる」
この言葉は女性のためのカウンセリング機関「女性ライフサイクル研究所」の創設者であり、立命館大学でコミュニティ心理学の研究をしている村本邦子先生の言葉です。
「私」という感覚、「自分」という存在の境界線や輪郭は、どうやって作られていくのでしょうか?意外に思われるかもしれませんが、それは「NO」から始まります。今日は自分の主体性がどのように形成されるのかという点についてご紹介したいと思います。
母親のお腹の中にいる時、というのが最も子どもが親と一体になっている時だと思いますが、その後誕生してからも、子どもはしばらくの間完全に親や保護者の養育に身を任せます。
もちろんお腹の中にいる時でさえ、子どもはお腹を内側から押したり暴れたりすることによって、親に子どもとの「境界線」や「他者性」を感じさせます。
そして誕生後は次第に自らの欲求や意志を花開かせ、それを表現するようになります。
そして、親と徐々に(マイルドなものから激しいものまで)ぶつかるようになる、つまり、親に対して「NO!」を言うようになります。
これは子どもが自らの意志や境界線を主張しようと試行錯誤している状況、と捉えられます。
この時の「NO!」は洗練されたものではなく、原始的だったり刹那的な欲求であることが多いかもしれません。
他者に対して「これ以上入ってこないで」という「NO」だったり、自分と相手は違うんだという意味での「NO」だったり、「拒否」や「違和感」「イヤだという感覚」…こうした「NO」という気持ちが大切にされ、発展していくことによって、人は自らの境界線や主体の感覚、自我を育んでいくのだと思います。
***
つまり、世界と一体になっているときは別に自分の主体なんて感じなくていいわけです。
ところが世界や他者との間で衝突が生まれた時、違和感が生まれた時に初めて「自分の輪郭」が立ち現れてくるのです。
その輪郭がまだまだおぼろげで、危ういところに、子どもが周囲の暴力の被害を深く受けてしまう要因もあります。
つまり、侵入を強く受けやすいのです。物理的にも、精神的にも。
もし、この「NO」が、無視されたり、否定されたり、取るに足らないものとして扱われてしまったらどうなるでしょうか?1回だけではなく身近な関係の中で繰り返されていったとしたら?
そうすると、子どもは自らの輪郭がわからなくなります。
境界線を突破されてしまったり、無視されてしまうので、自分の「主体」がなんなのかが見えなくなってしまうのです。そして自分の輪郭、主体よりも重要なのは「相手の」欲求なのだという感覚が漠然と残り、蓄積されてしまうこともあります。
***
自分を大切にするという事は「自分にとって心地の良いことをする」だけではなく「自分の「NO」を大切にする」ということがとても大切です。そのためには自分の「NO」のサインに気づいたりなぜNOと感じたりするのか、それを知っていく必要があります。
様々な経験の積み重ねの中で自分の「NO」がわかりづらくなってしまっていたり、「NO」の伝え方が分からなかったり、逆に自分がいっぱいガマンしてきた分相手の「NO」が尊重できなくなっていたりすることはないでしょうか?
カウンセリングでは、一人一人の「YES」だけではなく「NO」も大切にします。安全な環境で自分のNOを知り、それを理解してあげることから始めてみませんか?
身近な人を大切にするために必要なことpart2
過去は現在、未来とつながっている。
距離のある関係であればうまく人付き合いができても、親密で近い距離になったとたん、感情的な問題がおきてしまう、そんな悩みは珍しくありません。
例えば、自分が親にされて嫌だったことを気づいたら自分の子どもにもしてしまう、とか
怒りっぽかった父と同じように恋人に怒りを爆発させてしまう、とか親にこうするべきだと言われる経験を重ねるうちに、相手に合わせるのが当たり前になってしまい自分が何をしたいのかわからない、といったことがあります。
そうした悩みをじっくりと紐解いていくと、幼少期の体験や親子関係が根っこにあることがしばしばあります。
幼少期に起きた未消化の出来事や、自分でも忘れていたり言語化できずにいたりする怒りや悲しみや恐怖が、その人の対人関係に影響を及ぼしているのです。
忘れているようでも身体や感情、自分の深い信念に刻み込まれ、似たような状況に遭遇した時に自分でもコントロールできない激しい反応を引き起こしてしまったり、自分が望まない行動を繰り返してしまったりといったことが起きます。
幼かった時代には受け止めることが難しく、忘れることや抑圧してなかったことのように処理したり、別の何かで紛らわせようとしたりすることで、自分の心をなんとか守ってきた、つまり生き延びてきた。
しかし押し込めた感情や叫びはなくなるわけではなく、自分の考え方や信念、対人関係に知らず知らず影響を与えてしまうのです。
こうした傷つき体験について、安全な環境の中で少しづつ解きほぐし、自分自身に統合していくこともカウンセリングの目的の一つになります。
それは傷ついた自分に出逢い直して労ったり、その時の自分の気持ちを大切に感じ直す作業でもあります。
またそうした体験の蓄積が今の自分にどんな影響を与えているのか眺め直し、「なぜ自分はこうなんだろう?」に対して、実感をともなって理解していくことにもつながります。自分が自分の理解者になってあげるということです。
そうした先にこうなりたい、本当だったらこうしたい、と思う自分自身の姿(行動や考え方)に変化していくことがあります。
このような作業を一人で行うことは困難ですが、カウンセリングという枠の中ではカウンセラーが伴走しながらいっしょに試行錯誤していきます。
興味のある方や思い当たる方は、お気軽にお問合せください。
イラスト:https://www.instagram.com/hyangbokshim/
身近な人を大切にするために必要なこと part1
お互いに安心して関わるために「境界線を尊重する」
身近な人間関係には、親密で近いからこそ抱えてしまう難しさがありますよね。今回は家族やパートナー、恋人、友人同士など身近な関係について考えます。
第一弾はお互いに安心して生活するために大切な「境界線」について考えていきます。
・境界線とは?
人間関係における「境界線」とは、例えば花壇の柵や家のまわりの塀、大切なものをしまっておく宝の箱、といった物に例えられることがあります。自分の大切にしている“こと”や“空間”や“物”に他人 が許可なく立ち入って荒らされたり傷つけられたりすることを防ぐために「ここから先には勝手に入らないでね」と示すものです。
境界線には大きく分けて3つの種類があります。
①物理的境界線
これは身体や持ち物を守る境界線です。
勝手に自分の身体を触られる、断りなく自分の持ち物を使われる、こんな時に物理的境界線が侵害されたと感じます。
②心理的境界線
これは、心や気持ちを守る境界線です。
自分が聞かれたくないことを聞かれる、話したくないことを話させられる、こんな時に心理的境界線を侵害されたと感じます。
③社会的境界線
これは法律やルール、マナーなどで守られる境界線です。
こうした境界線は、親しい関係だからこそ破ってしまいやすくなります。
DVなどの極端な例だけでなく、つい遠慮なく他人には聞かない事でも聞いてしまう、相手の気持ちを確認しないで接してしまうことがおこりやすくなります。しかし、どんなに親しい関係であっても、また(破った側からすると)些細な事と思える場合でも、境界線を破られてしまうと人は傷ついたり、ショックを受けたり、怒りを感じたりするものです。それが繰り返されたり、大きなショックをうけることがあると、安心していられる関係ではなくなってしまいます。
もし自分の境界線を無視されて破られた、と感じるのであれば、相手に伝えたり信頼できる人に相談したりすることが大切です。
では身近な関係を大切にするために、境界線の考えをどう活かしていけばよいでしょうか?
境界線の侵害は、無理強いや脅迫の形で現れることが多くあります。
逆に言えば、「お互いが本当の意味で同意をしている」ことがとても大切なのです。
本当の意味での同意とは、同意をしなくても「罰を与えられたり危害を加えられる心配がない状態で決めることができる」ということや、「お互いに相手を大切に思う気持ちがある」ということ、その行為をしたら「起こるかもしれないことをお互いが分かっている」こと等が基盤に成り立ちます。
「これについて聞いてもいい?」「これってあなたはいやじゃない?」
親しいからついわかったつもりになっていることでも、丁寧に互いの意思や気持ちを聞くこと、そしてお互いに自分の意思や気持ちを安心して表現できることが大切です。
自分が守りたい境界線はどこなのか?
相手が守りたい境界線を大切に出来ているだろうか?
身近な関係だからこそ、改めてこれらについて考えてみるのはいかがでしょうか。
問題をスモールステップで考える
私たちが悩んでいる時、たいてい問題を大きく、漠然としたものとして捉えてしまいがちです。
例えば「もっと自信を持ちたい」、「職場でうまくやりたい」といった悩みはよく聞かれるかと思います。そういった悩みについて考え始めると、いやな気持になってしまって気分が落ち込んだり、考えるのをやめてしまったりしますよね。そしてまた気づくと同じ悩みを抱えてしまっている…というようなことがあります。
同じことを10分以上頭の中でグルグルと考え続けてしまう場合、それ以上答えが見つからないことが多い、ということがわかっています。
そのような時は大きな問題を小分けにし、スモールステップにしていくことが役に立つことがあります。
この時に大切なのは、
①できるだけ具体的に言葉にして書き出し、細分化する。
②達成しやすいことから難しいことまで並べてみる。
③やりやすいこと、簡単に思えることから手を付けていく。小さな階段を上るように。
④時々振り返りをして自分のがんばりを認める。
いきなり全てを解決することはできなくても、 大きな問題を小分けにしていくことで、突破口を見つけることはできます。
対処できそうなこととできないことを見極め、対処できることから手を付けてみるだけでも気持ちや生活は変わります。
ただし、問題を小分けにしたり言葉にすること自体、初めての場合には難しいかもしれません。
カウンセリングでは、カウンセラーからも積極的に質問しながら、「大きな悩み」を「取り扱える小さなサイズ」にしていくお手伝いをします。
できることから手を付け、どんな風に自分や生活が変化していくか、いっしょに色々なことを試してみましょう。
在日コリアンのためのカウンセリグルームを開設した理由
私たちは2020年10月、京都市において在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(ZAC)を開設しました。本センターは、臨床心理士や精神保健福祉士などメンタルヘルスに関わる専門職と地域でコミュニティ活動を行う方、在日コリアンと日本人がいっしょに企画し、開設しました。
ZACでは、設立前から10年近くにわたり問題意識をもった在日コリアンと日本人で研究会や自助グループ活動を行ってきました。その中で「安心して通える在日コリアンのためのメンタルサポートセンター」を求める切実な声があることに気づきました。
(詳しくは日本質的心理学会学会誌『質的心理学研究第18号』に掲載された「『してもの会』におけるRespecful Racial Dialogueー在日コリアンと日本人の『分断から動き出す交流』」をご覧ください)
カウンセリングでは、自分の家族のことや生い立ち、所属するコミュニティのことをカウンセラーに話すことがあります。また職場で不安に感じること、対人関係の悩みについてもテーマになることが多いでしょう。これまでカウンセリングを利用した在日コリアンの方からしばしば聞いてきたのが、
「家族のことや自分のアイデンティティについて相談しようとしたら、カウンセラーが在日コリアンの事を全く知らないために、在日コリアンについて一から説明しなくてはいけなくて…自分のカウンセリングどころじゃなくなってしまった」
「自分の悩みを話したところ、カウンセラーの持つ無意識の偏見や差別にあってしまい、カウンセリングをやめてしまった」
といった話でした。
もちろん、全ての悩みの原因がルーツに関わっているわけではないかもしれません。
在日コリアンであることはその人の一つの側面にすぎないこともあるでしょう。
しかし、私たちはあくまで個々人に立脚しながらも、在日コリアンであることも含めたその人の全体を理解し、取り扱っていくことができる場が必要なのではないかと考えました。
ルーツについて話したい方もそうでない方も、多様な在日コリアン一人一人の悩みに寄り添うカウンセリングをこれからも行っていきたいと思います。
「マイクロアグレッション」を
知っていますか?
在日コリアンが感じている「差別って言えるかわからないけど」「日常生活のいろんなところで出会うモヤモヤする」言動
「日本語上手ですね?」
「留学生ですか?」
「日本生まれだったらほぼ日本人じゃん!」
「ワールドカップどこ応援するの?」
「日本人とか外国人とか関係ないよ」
「ヘイトスピーチなんて一部のおかしな人のやってることだから気にしなくていいんじゃない?」
大丈夫な人もいるかもしれない、でもやっぱりなんか気になる言葉。
実はこれ、「マイクロアグレッション」という名前がついていて、アメリカを中心に研究が進められているんです。
アメリカのBLM(ブラックライブズマター)運動など人種差別問題への関心が世界的に高まっています。そんな中であからさまな差別やヘイトスピーチだけでない、学校や職場、友人関係の中など日常の何気ない場面で現れる「差別とまでは言えないけどなんかひっかかる」「もやもやする」言動にスポットが当てられるようになりました。日本でもNHKを中心にメディアやSNSでもにわかに注目が集まっています。
「マイクロアグレッション」とは民族・人種的少数者の方だけでなく女性、LGBTQの方々など社会的少数者に対して「軽く扱ったり」「見下したり」「経験を否定したり」する言動を指しています。言っている本人は悪気がないことが多く、善意から話していることすらあります。
一見ささいなことと見過ごしてしまいがちですが、実はこのマイクロアグレッションが繰り返されることで、うつや不眠、心臓疾患などの影響があるとされ、心身に大きなダメージが与えられることがわかってきています。
また医師やカウンセラー、医療・福祉職など対人援助に関わる専門職の人によって行われることもあります。つまり日常的なマイクロアグレッションによってうつや不眠となった方が病院やカウンセリングを受けに行った先でさらに被害を受けてしまうということも起こり得るのです。
こうした状況を改善するために、ZACは創設されました。
このマイクロアグレッションからどうやって自分を守っていくか、また遭遇した時にどうやって自分や大事な人を助けられるか、そしてどうやって傷ついた気持ちや心を癒し、回復していくか、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンターでは今後情報発信していきたいと思います。
その第1弾としてマイクロアグレッションについて日本で初めての翻訳本が出版されました。私たちZACも翻訳者として参加しています。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
この文章は「つながる在日コリアンのコミュニティ Man&Me マンナミー」さんにご紹介いただいた文章を再編集したものです。
https://www.facebook.com/mannamii.jp/
2021年4月17日
なぜ感情はあるの?
不安で頭がいっぱいになってしまい冷静な判断ができなくなってしまう、
怒りがコントロールできずに大声をあげたり攻撃的なことを言ってしまう、
憂うつな気持ちにとらわれて一日中何もできない、
こういった事にお悩みの方は多いかと思います。
自分の感情に振り回されてほとほと疲れてしまう、怒りをコントロールしろと言われても難しい、そういったことがある方もいるかもしれません。
私たちにはなぜ感情があり、感情とどのように付き合っていけばいいのでしょうか?
今日は「なぜ感情があるのか」について考えていきたいと思います。
例えば山を登っていて、前からクマが現れた時、人は恐怖を感じます。
あるいは車が猛スピードで自分に向かって走ってきたら、やはり怖くなりますよね。
感情はこうした状況に対する反応であり、逆に言えば、私たちが今どのような状況に置かれているのか、というメッセージを伝えてくれています。
例えば恐怖は、危害の可能性を伝えています。そして私たちに「逃げろ!」もしくは「戦え!」という強いメッセージを伝えてくるでしょう。
怒りは、境界を破られている状況を伝えています。そのため「破ってくるものを自分の領域から押し出せ!」「攻撃しろ!」というメッセージが伝えられます。
不安は、将来の脅威を伝えています。そこには「備えろ!」注意深くなれ!」というメッセージが込められています。
もしこうした感情がなければ、適切に状況に対処できなくなることがあるでしょう。
また感情が不快で強いのは生存に関わる危機を知らせ、私たちに状況に対処しろと明確に伝えるためです。
目覚まし時計、アラームといっしょですね。
もし目覚まし時計がやさしく小さくなっていたのでは、起きられませんよね。
その意味で感情は人間が生きていく上で不可欠なものと言えます。
しかし、感情がやっかいなのは、感情は時として状況を誤って伝えることがあります。
また感情はヒントであり、可能性を知らせていますが、決して事実そのものではありません。
不安を感じているからと言って必ずしも危険が迫っているとは限りませんし、怒りを感じているからと言って攻撃することが最善の方法ではないことがあります。
カウンセリングの目的の一つは、感情について正しく知り、その取扱い方を模索することにあります。不安のあまりこれまで避けていたことやできないと思っていたことでも、新しい学習や経験を積むことで変化していくことができます。
カウンセリングを通して新しい感情との付き合い方を探っていきましょう。
参考文献『不安とうつの統一プロトコル:診断を越えた認知行動療法ワークブック』
2021年4月3日
悩みを悪循環のパターンと捉える
日常生活の中で、悩みって尽きないものですよね。
人間関係、仕事や学校、ままならない自分。。
人生は悩みと共にあると言っても過言ではありません。
では悩みとはいったい何なんでしょう?
様々な捉え方があるとは思いますが、悩みを「繰り返される悪循環のパターン」と捉えてみましょう。
逆に言えば、たまたま起こった一回の出来事であれば、それは「事件」や「事故」とは言えても、悩みとは言いませんよね。
多くの場合、悩みとは繰り返されることで、しかも一人では変えることが難しいことを指すかと思います。
例えば、
仕事でミスをして注意を受けた
その後で自分を責めてしまって落ち込んでしまった
自信がもてなくなってしまい、緊張して余計に仕事でミスをしてしまう。
友人やパートナーからの何気ない一言で自分がカッとして怒ってしまった。
どうして自分はすぐカッとしてしまうんだろう。
後悔するけどまた同じことをしてしまう。
やらないといけない事に手が付けられなくて締め切りに遅れてしまった。
どうしていつも自分はやる事が遅いんだろう。
そう思うと余計に手が付けられなくなって、ついスマホを見て時間をつぶしてしまう。
こうした悪循環が出来上がってしまって、しかもそこから自力で抜け出すことができない。
だからこそ「悩み」と呼べるものになってしまうのではないでしょうか。
カウンセリングではこのような悩みについてお話を伺いながら、どのような状況(他者、出来事)に対してどのような反応(感情、行動など)が起こっているのか、そのメカニズムやパターンを探っていきます。
悪循環が繰り返されている時、そこには悪循環を支える「何か」が存在します。
その人特有の考え方の特徴や持っている行動パターン、あるいはその人の置かれている環境…いろんな方面から悪循環を支える要因を見つけ出し、そこにアプローチしていくことで、悪循環から抜け出しより良い循環に変えていくことがカウンセリング目標の一つになります。
変えようとすると、一見どうしようもなく抜け出せないように思える悩みでも、メカニズムを「見る」ことで、突破口が生まれてきます。小さな変化でもそれを繰り返すことで、悪循環を解消することは不可能ではありません。
カウンセリングを通していっしょに考えていきましょう。
2021年3月21日
ZACでのカウンセリングの流れをご紹介します
今日はZACでのカウンセリングのスタートから終結までの流れをご紹介します。「カウンセリングってどう始まっていつ終わるの?」という方はぜひご覧ください。カウンセリングの進行中、今自分たちはどこにいてどこに向かって進んでいるのか、いつも確認しながら進めていきましょう。
①初回申込より、初回申込書を記入して送信してください。
②折り返しこちらからカウンセリング日時等について返信いたします。
③初回面接…1回 お悩みの概要をお聞きし、カウンセリング頻度などを話し合います。
1回のみのカウンセリングをご希望の場合は、その回で得たい内容をお聞きしできるだけお応えします。
④問題の把握と整理(アセスメント)…平均3~5回程度
問題の全体像を順を追ってお聞きします。ご自身の自己理解やこれまでの振り返り、問題の整理に役立つよう進めていきます。一人ではうまく整理できないお気持ちを言葉にするお手伝いをしたり、悪循環や問題が繰り返されるメカニズムをいっしょに明らかにしていきます。
⑤目標の共有…1回
一見解決できないと思える問題でも、問題を小分けにしてスモールステップで目標を立てることで問題に対処していくことができます。いっしょに無理のない目標を立てていきましょう。
⑥問題解決…お悩みの内容によって数回~
考え方のクセや傾向を知りその幅を広げる、取り扱いにくい感情を自分なりに取り扱えるようになる、新たな行動のレパートリーを広げるといった現在に焦点を当てたアプローチを行います。他にも過去の体験を整理するお手伝いなど、ご希望に応じて行っていきます。
⑦振り返りと終結…1~2回
⑧終結後のフォローアップ…必要に応じて
以上が、ZACでのカウンセリングの流れです。
ひとりひとりのニーズあった進め方をしていきますので、ご希望はお気軽にお伝え下さい。
2021年3月13日
カウンセリングってどんなことをするの?
「カウンセリングって何をするんですか?」
「話を聞いてもらえるだけなんじゃないですか?」
という疑問をしばしば耳にすることがあります。
相談したいことがあっても、具体的にカウンセリングってどんなことをするのかわかりづらいと、実際のところわざわざお金払って利用するのも…と思いますよね。
一口にカウンセリングと言っても実はいろんなやり方があるんです。
ここではざっくりふたつに分けて紹介します。
一つはクライエントさんが自由に話をするタイプのカウンセリング。このタイプでは自由に話す中で大事なことに気づいたり、気持ちが整理されたり、気分がすっきりすることがあるでしょう。カウンセラーも気づきを教えてくれたりします。多くの人がイメージするカウンセリングはこのようなタイプのものではないでしょうか。
もう一つは問題や困りごとに焦点を当てて、どうすればそれらを解消できるか、少しでもよい状態にできるか、という視点から行うカウンセリング。ここではカウンセラーとクライエントはチームを組んでお互いに知恵を出し合い、問題に向かっていっしょに作戦を立て、日常生活の中で実践できるような工夫を探ります。その過程で、カウンセラーは心理的なスキルをお伝えしたり、実際に練習してみたりします。そして、今までにはなかったような行動や考え方の幅・選択肢を増やすことを目指します。
せっかくお金を払うのだから、自分の希望や相性、目的にマッチするカウンセリングを見つけたいですよね。
どのようなカウンセリングが受けられるのか、直接問い合わせてみたりカウンセラーに率直に聞いてみるのもありでしょう。ZACでもそうした疑問やお問い合わせは大歓迎です。カウンセリングを迷っている段階でも、カウンセリングに対する不安や疑問は遠慮せずにお問い合わせください。
今後もZACで受けられるカウンセリングの中身や心理的スキルについて、ご紹介していきますね。
2021年3月6日
自分なりのストレス対処法を見つけてみませんか?
私たちは日々の生活の中で、様々なストレスに直面します。
ストレス状況を根本的に解決することは大切ですが、時間も気力もかかることが多いですよね。
そんな時に役に立つのが「コーピング」の考え方です。
コーピングとは、「意図的な対処」のことです。
つまり何か困ったことや問題が起こった時に備えて事前に準備し、その問題や課題に「こう考えてみようかな」「こう動いてみようかな」と意識的に対処すること(『認知行動療法実践ワークショップⅠ』伊藤絵美 著 より)なんですね。
コーピングには「認知的コーピング」と「行動的コーピング」の2種類があります。
認知的コーピングとは、頭の中のイメージや考えを意図的に工夫したり切り替えたりすることです。
行動的コーピングとは、その場で実際にどのような行動をとるか、という行動の工夫や切り替えのことです。
問題状況に備えてその時自分に何と言ってあげると良いか(認知的コーピング)、何をすると良いか(行動的コーピング)あらかじめ考えて おくことが役に立つことがあります。
例えば「人にどう思われているかいつも気になってしまう」という方の場合、いくつかのコーピングを準備しておくことができるかもしれません。
不安がわいてきたら「自分が人に受け入れてもらえてるか不安なんだよね、心配になるよね」と不安を自分で認めてあげることや「もう少し様子を見てみよう」とか「そんなに自分を憎む人もいないだろう」「無理せず自分らしくいればそれでいいんだ」といった言葉を自分にかけてあげることで少し落ち着くことができるかもしれません(認知的コーピング)。
また行動的コーピングとしては「体の状態を変えること」が効果的と言われています。不安がわいてきたら「その場で大きく伸びをして深呼吸する」「ストレッチをする」「熱いシャワーを浴びる」などが良いかもしれません。「ひたすら何かに取り組む」のも効果的と言われています。単純な動作を繰り返してできるような、ひたすら床をみがく、編み物をする、といったことで気持ちが少し落ち着くかもしれません。
ここに書いているようなことをすでに実践されている方も多いのではないでしょうか。これまで何となくやっていたことでもコーピングとして意識的に行うことでストレスを緩和させる効果が高まります。
大切なことは、「うまくいくかどうか」とか「いいかわるいか」よりも、いろいろなコーピングを幅広く持っていて状況に合わせてそれらを意識的に柔軟に使えることです。カウンセリングを通してあなたにぴったりのコーピング(自分の助け方)を見つけていきましょう。
参考文献 認知行動療法実践ワークショップⅠ 伊藤絵美 著